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EC運営初心者が知るべき3つの前提

「今さら聞けない通販の始め方!」を通販のプロが教えます。マイナビなど大手企業の通販事業を成功に導いてきた通販受託のプロがこっそり教える通販初めの一歩。これから通販を始める方には必見の講演です。
開催日時
2018年03月30日(金)  19:00
場所
青山学院大学
住所
東京都渋谷区渋谷4丁目4−25
講師
JFT株式会社 代表取締役 石井勝也

インターネット通販。今では、インターネットを通じて商品を購入したことのない人を探すのが難しい時代になってきました。
有名メーカーの商品であれば、ネットで買えて当たり前。逆にいえば、多くの企業がネット通販を行った結果、これから新規にインターネット通販に参入する企業のハードルは非常に高くなっています。

私は、これまで数多くの企業の通販進出、運営改善を行ってきた経験から、ネットショップの新規開設で陥りやすいトラブルについてご紹介させていただければと思います。

EC運営初心者が知るべき3つの前提

  1. ネットショップは期待ほど売れない。
  2. ネットショップは事前準備で勝負がついている
  3. ショップオープン前でも、売り方、売れ筋はわかる

 

1,通販は思いのほか売れない

これから新規に通販を始める方に一番多いパターンですが、売れすぎたら困ると思っている人が、とても多いです。今まで私も100件を超える通販サイトの新規オープンをお手伝いしてきましたが、売れ過ぎて困った例は2件しかありません。ほとんどの会社は、通販を始めても売れません。悲しいほどにお客さんが来ません。まったく注文がありません。売れ過ぎて困ったという妄想を膨らませるより、きちんと売るために頭を使いましょう。

 

なお、私の知っている売れ過ぎて困ったケースは以下の2件です。

1件目:テレビなどマスコミ露出が多い会社。

2件目:競合に比べて、圧倒的に価格競争力がある会社。

売れ過ぎて困ると言っても、受注を停止すれば困る事はありません。だから、売れ過ぎて困ったといっても、大したことはありません。通販は店頭ではありません。通りすがりに歩いている人が、たまたま買ってくれた。その人が口コミを広めてくれて売上が爆発する。。。。そんな都合の良い話は、ほとんどありえません。

通販初心者に対して、だいぶ厳しい事をお話しているかもしれません。ただ、インターネット通販は店舗を構える事と比べれば、安く商売を始められます。その一方で、一度お店を始めてしまうと、リニューアルに時間がかかるのは、お店もインターネット通販も変わりません。だから、商売を始める段階できちんと準備をしていただきたいと考えています。

■ネット通販 初心者の良くある勘違い

通販開始のタイミングで
「楽天で月商1億円を超える毛ガニ屋さんより、うちの方が安く売れるから、うちの方が売れる。」

とおっしゃる方も多くいらっしゃいます。

でも、冷静に考えてください。月商1億円を売る会社の仕入れ力が弱いわけがありません。1億円売るには、売るための広告費、人件費が必要です。その費用を無視すれば安く商品を販売できるのは当然です。1億円も暴利で儲けている会社なんて、私は聞いたことありません。

ベンチマーク(他社の調査)をしているだけ、かなり地に足のついている方です。インターネット通販を始める前の方で、他社の販売ページを見ている方というのは、思いのほか少ないです。

 

◆通販、売れない。困った。

私の経験では、通販の戦略見直しを考えるのは、通販を始めて4~6か月経った頃ではないかと思います。始めた直後で売れないのであれば、時間が経っても変わらないので、一刻も早いテコ入れを!!

★通販を始めて1~2カ月 シンデレラ期

いつかはうちの店舗も人気に火がついて一攫千金!と夢を見る会社は多いです。

★通販を始めて3~4か月 現実期

3~4か月も経つと、少しずつ現実が見えてきて、何もしなければ売れないという現実が見えてきます。外注、広告、コンサルタント、打ち手を検討しはじめます。

★通販を始めて5~6か月 てこ入れ期

撤退やてこ入れなどの打ち手を選択。

 

ネット通販運営代行を頼む前に

通販をはじめる会社、撤退する会社。それぞれの会社がそれぞれの判断をされる事と思います。多くの会社の通販進出支援をさせていただきわかったことは、ほとんどの会社が通販進出するにあたって、準備が不足しているというのが共通しています。

通販は利益を生み出す手段でしかありません。もちろん、会社の情報発信機能もあるかもしれません。ただ、中小企業に求められるのは利益の最大化。その中で、インターネット業務はかなり負荷が大きいです。利益を生み出す商材を持っているのであれば、卸業の方に専念していただく方が、メーカーにとっては手堅い商売です。通販に進出した結果、知名度があがり、卸先が開拓できた。卸先が開拓できたので、インターネットショップを撤退に懸命な選択です。

最近では、このような会社が増えていると聞きます。

ケンズカフェ東京「ネット通販やめたら売上げ3倍、利益率は2割増」

 

参入する前に、どのような運用が目的なのかを考えておきましょう。

商材にもよりますが、ネット通販で30万円や50万円の売上を立てるのは大きなハードルではありません。逆にネット専業部署を構えて、一事業部ないしは独立企業をしようと思うと、ハードルは全然変わってきますし、初期投資も全然異なります。これから、通販を始める前に、ぜひ通販事業の社内での位置づけを考えてみてください。底が決まっていないと、先に進みません。

最近は、倉庫業務、発送業務から外注して費用を抑える会社も多くあります。また、アパレルブランだと、売上は頭打ちだし、季節毎に新商品が大量に入荷するために人件費が高くつくため、アパレル専門の通販運営代行を頼むケースが多いと聞きます。単純に倉庫作業だけ委託したい、商品撮影から商品ページ作り、倉庫作業まで全部丸投げしたいなど状況に応じて、様々な委託企業があります。多くのケースで外注したほうが人件費まで含めて考えると、費用が抑えられるというケースが多いです。

費用をかけない展開というのを模索する方法はあります。

 

◆楽天退店する前に

厳しい話ばかり続けてきましたが、既に通販を始めている。通販が売れないという事もよく分かったし、撤退かテコ入れの選択が迫られているという方も多いと思います。予算もないし、じり貧。ただ、最後に足掻いて通販の可能性を試してみたいという方も多いと思います。私がおススメするのは、以下の戦略です。

  1. 競合を選定
  2. 写真を外注
  3. ウェブページを外注

競合が何を、いくらでどのように販売しているか調査します。そのうえで、可能な限り競合に近い価格、近い販売手法(送料無料など)を採用します。その次に、その競合の商品ページに近づくべく、写真を外注し、商品ページを外注します。

写真の外注先:skillots

ウェブページの外注先:クラウドワークス

写真の外注は、安いところを探せば1万円で数ショットを撮ってくれると思います。クラウドワークスも、3~5万円も払えば、それなりの商品ページを作ってくれるはずです。写真とウェブページ作りで5万円を支払って、広告費に3万円使って、結果が出なければ、通販自体を諦めた方が良いと思います。数千円でも売上が増えるようなら、通販の戦略をきちんと考えるのも選択肢です。

 

2、ネットショップは事前準備で勝負がついている

先ほどお話をしましたが、ほとんどの企業がネットショップ運営で準備が不足しています。きちんと準備していれば、外注業者を適切に組み合わせて、効率的な運用が出来ます。何も準備せずに、とにかく自社の商品を販売してみて、売れるかどうか検証しようとしている時点で、まず間違いなく売れません。

通販では、誰に、どう売るかなど、店頭であまり気にしていなかったような事でも考えておく必要があります。

以前、家具屋さんの通販企業の会社のお手伝いをしていた時の事です。家具は時期によって、商品の利用者が違います。春は新入学のお子さんが多いようです。秋は転勤シーズンの社会人が多いようです。

春にサイトを作ると、お子さん向けの商品写真が多い方が売れます。商品写真にもお子さんの写真を盛り込んだ方が、購入者もお子さんの利用シーンを想像しやすいので購入につながりやすいです。逆に秋だとお子さんの写真よりも、大人の写真の方が好まれます。外注したウェブページで、春は大成功だったとしても、秋の商戦では対応できません。同じように売れると思った会社からすると、肩透かしもいいところです。

そして、翌年。
ライバルの会社たちは、売れ筋の商品や競合をよく見ています。去年自社でよく売れた商品ページを参考に、より良い商品ページを作ってくるので、相対的に売れなくなります。家具や食品など通販の市場規模が大きいカテゴリーでは、異常なほどの価格競争が行われています。

では、通販サイトが出来る前に、何が出来るでしょうか。意外とたくさんあります。とにかく競合の情報を貯めていく事です。具体的には、ネットショップ運営初心者が最初にすべき準備は、以下のようなものです。

■最初に取り組むべき作業

ライバルを見つけ、分析するという作業が最初の仕事になります。

  1. 自社の競合は誰か。
  2. その競合は、いくらで商品を売っているか。
  3. その競合は、どのような売り方をしているか。
  4. その競合は、どのような商品ページをしているか。
  5. その競合のメルマガを取っているか。

では、売れ筋はどこで見つけてくるのか。それは、楽天もヤフーもAmazonも売れ筋ランキングを出しています。そのランキングを見れば、だいたいのトレンドは見て取ることは出来ます。

楽天市場ランキング

ヤフーショッピングランキング

Amazonランキング

すぐに売上のてこ入れが必要という話であれば、写真、値段、売り方を可能な限り模倣してください。意外と知られていませんが、通販にも売り方の工夫が存在します。例えば、一番知られている売り方の工夫は、最安値にすることや、送料の無料設定を低めにすることなどがあげられると思いますが、それだけではありません。

〇通販の集客ノウハウ

▼インスタ映えの効果

例えば集客。最近では、「インスタ映え」という言葉がありますが、SNSを通して集客を行うという工夫が広く普及しています。インターネットでは、集客戦略を練らないと、店の前でお客様が歩いているという事はありません。古くから使われている手法といえば、お試し戦略。最近では一般的ではなくなってきていますが、初回限定割引価格の設定というのは、かなり普及した戦略でした。

▼ECのSEOは最近のトレンド

通販の最先端という部分で言えば、SEOなど重用されています。ただし、Googleやヤフーなどの検索サイトではなく、楽天市場やヤフーショッピング、Amazonなどのインターネットショッピングサイトの中においての対策です。

最近、楽天市場やAmazonなどのショッピングモールは、検索結果ページの表示順位を売上順にしていることが多いです。その為、楽天スーパーセールなど、楽天市場全体のセール期間に入る前に、割引販売をしてランキング上位に食い込んでおくと、セール期間中にランキングを見た人達が割引をしていない正規の値段で買うので、大きな利益が見込めるという戦略が少し前までは有効でした。最近では、楽天側も対策をしていて、セール期間前は商品の価格設定を変更できないようにしています。このような小細工は、少し広まると、どんどん楽天側も対策をしてきます。このような形で、日々、売り方の戦略というのは日進月歩で進んでいます。

▼毎月届く定期販売も工夫次第

先日から使えなくなりましたが、健康食品の販売戦略もかなり高度化しています。初回だけ割引価格。ただし、2か月目以降の販売は定価。契約最低期間は半年以上というような携帯電話会社のような戦略を採用していました。

色々書きましたが、普通に広告を出稿して商品を販売しても利益が出せないため、工夫をこらして利益をあげようと各社しのぎを削っているという状況です。

▼本質的な差別化

上記の戦略はあくまでも付け焼刃で、きちんと利益を生み出すには、事業分析をしていったほうが中長期での利益に繋がります。私の知っているパン屋さんの例をご紹介します。

以前、私のクライアントでパン屋さんがいました。パン屋さんなので、商品数が40種類以上あります。長年、売上が一定額で頭打ちになっていました。その頭打ちの状況で、ご相談をいただきました。どうしたら、売上があがるかというのが課題でした。

話を聞くと、毎日、注文された個数だけパンを焼き、箱に詰め、発送をするという作業をされていらっしゃいます。その作業をするスペースがあれば、もっと売上があがるはずだが、そのスペースを増築するお金がないという事でした。店頭での売上も頭打ちなため、通販に活路を見出したいが、すぐに拡大も見込めず、通販の売上を経営者の労働時間の増加だけで対応していたため、疲れてきてしまっていました。

相談をいただき、私は思い切って40種類の商品を10種類以下に絞ってもらう事にしました。売上を分析すると、上位10商品だけで売上の70%以上を占めていました。逆に言うと、下位30商品は売上では30%も占めていないのに、労働時間としては3倍近い時間が取られているということでした。経営者の方の疲弊が一番の課題と考え、売上が落ちても商品数の絞り込みを提案したという流れです。経営者の方は、可能な限り、売上が落ちないようにという事でしたので、「人気商品のおまとめセット」を若干割引価格で販売し、下位30商品の販売は継続するという事で戦略が決まりました。

その結果、おまとめセットに人気が集中していきました。通販部門というとらえ方をすると、売上に対して稼働時間が減ったわけですから原価が下がったことになります。その下がった原価の分、値引きを強化していただき、売り上げを伸ばしていきました。商品数が絞り込まれたおかげで製造の手間、仕入れの煩雑さや梱包時の時間も大幅に圧縮されたので、その分は利益は増えていることになります。

商品製造の時間が減り、その分、商品ページへの作りこみを行っていただき、割引をしていただきました。購入者への再購入の呼びかけを行ったこともありますが、対策から3か月で売上は3倍、利益は2倍という結果が出ました。商品ページの作りこみと、割引をしたので、当然売上は増やせます。ただ、原価にまで踏み込んでいたので無理のない形への拡大路線が図れたという事になります。

 

このパン屋さんは、現在は通販はやめて、卸販売を強化されました。ただ、卸先が複数あるので、自店舗で通販をやるより利益が大きくなったそうです。パパママストアのパン屋さんからすると、製造部門のスタッフと販売部門のスタッフの確保を考えるより、商品を卸した方が手堅いという判断でした。

通販コンサルティングでは、中々このような綺麗な話は生まれにくいです。ただ、中小企業だからこそ、売上なのか利益なのか情報発信なのか、目的を割り切っていただくことが重要だと思います。全てを狙っても、人手もお金もありませんから。

 

3、ショップオープン前でも、売り方、売れ筋はわかる

色々話をしてまいりましたが、通販は初めて見ないとわからないこともたくさんあります。初めて見ると、トラブルだらけです。ただ、主力商品を決めていないというのは、かなり厳しいです。通販では商品ページを作りこんでいないと、絶対に売れません。

これが店頭と大きな違いで、「とりあえず、店舗に並べておけばいいや」というのでは絶対売れません。主力商品は、きちんと写真を撮って、商品ページを作りこんで売る事が求められます。最低限、主力商品は2~3個作りましょう。その主力商品は、楽天市場での売れ筋で価格競争力があるかどうかを確認してください。また、10~20円安いというだけではお客様は中々買ってくれません。

また、その商品の特徴も考えてください。圧倒的に安いなら売れるかもしれませんが、少し安いだけだと売れません。「珍しい」とか「新鮮」とか何かあるはずです。逆に、何もないとすると、通販で売るのは厳しいです。インターネットというのは、手持ちの商品を売るというより、お客様が求めている商品を売るという場なのです。楽天市場を見るとわかりますが、花屋さんが母の日にカーネーションとどら焼きをセットで売ったり、日本酒屋さんが父の日に日本酒とボールペンを売ったりします。

これは、お客様が「母の日 どら焼き」などと検索するのですが、カーネーションだけを売っていては来店してもらえないので、どら焼きを売るんです。日本酒屋さんも同様です。どら焼きもいいけど、カーネーションもセットで買われてはいかがですかという提案をするには、お客様に来店していただく必要があります。

 

今回は、まだ通販を始めていないという方向けのお話ということでしたので、通販事業を始める検討材料として、通販は甘くないという話を中心にさせていただきました。店頭と違って簡単に進出できるという気持ちでは絶対成功はあり得ません。通販を始める際にはきちんと準備を整えてから参入いただければと思います。

 

本日はご聴講いただき、誠にありがとうございました。